急成長するネイティブ広告が抱えるジレンマ

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サイバーエージェント子会社のCyberZが2015年2月に発表したスマートフォン広告に関する市場予測によると、2014年に38億円だったネイティブ広告の市場規模は、2017年には350億円にまで拡大する見込みだという。ネイティブ広告とは、2010年にTwitterが開始した広告主の宣伝ツイートをタイムラインや検索結果ページの最上部に表示する「プロモツイート」のように、ソーシャルメディアやアプリ上で企業のオリジナルコンテンツとして配信される広告のこと。
ネイティブ広告について統一的な定義は確立されていないが、アメリカのマーケティング情報サイトiMediaConnectionは、ネイティブ広告を「利用者の消費体験にシームレスに統合するようにデザインされた広告ユニット」と表現している。

 ネイティブ広告の特徴としては、固定の広告枠ではなくユーザーが閲覧するコンテンツと同じように表示されることや、編集された記事のようにコンテンツ性が高いことなどがあげられる。たとえば、ニュースアプリであれば、プッシュ配信されるニュースの中に「sponsored」と記載されたネイティブ広告が掲載される。一見するとニュース記事の一つに見えるため、クリック率やクリック後のコンバージョン率も、従来のインターネット広告に比べてると高い数字が出ているという。ネイティブ広告のクリック率などの数字が高い最大の理由は、「広告に見えないから」に他ならない。

 Twitterは2014年8月から、フォローしていなくても関連性が高いと思われるツイートについては、タイムラインに表示させるようにアルゴリズムを変更した。この変更は、今後、ネイティブ広告の露出を高めるための布石のようにも思える。フォローしていない人のツイートであっても、タイムラインに表示される情報源として受け入れられるようになれば、ネイティブ広告への反応もよくなると期待できるからだ。

 ネイティブ広告は、ディスプレイ広告や検索連動型広告と同様に、将来はインターネット広告の主要メニューに成長する可能性を秘めているものの、クリアすべき課題はまだ多い。掲載メディアのコンテンツとの連動性を高めるようとすると、どうしても人の手によるコンテンツ制作が必要になる。いずれはネイティブ広告を自動生成して配信する技術が実用化されると予想されるが、現時点では、コンテンツの制作に負荷がかかることは否めない。

 最大の課題は、利用者がネイティブ広告をメディアの編集した記事やコンテンツであると誤認することを防ぐためのルール整備だろう。インターネット広告推進協議会(JIAA)は、「インターネット広告掲載基準ガイドライン」のネイティブ広告に関連する部分を改定するとともに、新たに策定した「ネイティブ広告における推奨規定」を公開した。ガイドラインでは、広告であることや広告主体者が誰かを明確にするなど、メディアやプラットフォーム運営者が守るべき指針を定めている。メディアとしては、利用者を騙すような行為は厳に慎むべきだが、広告であることが強調されすぎると、ネイティブ広告としての効果は落ちてしまい、結果として広告料収入は減ってしまう可能性がある。利用者にはフェアでありつつ、コンテンツ性の高いネイティブ広告で広告料収入を増やすにはどうすればいいか。ネイティブ広告の市場拡大には、広告媒体としてのメディアの真価が問われることになろう。