オウンドメディアの重要性

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近年、企業が直接所有する情報発信メディアを指す「オウンドメディア」という言葉をよく目にするようになった。オウンドメディアが注目されるきっかけになったのが、社団法人日本アドバタイザーズ協会のWeb広告研究会が2010年のWebマーケティング戦略として宣言した「トリプルメディア、トリプルスクリーン戦略を考える時代」である。この宣言の中で、企業が活用すべきメディアを、広告を掲載する「ペイドメディア」、企業が直接保有する「オウンドメディア」、クチコミなどでファンを形成する「アーンドメディア」の3つに分類して、その全体をトリプルメディアと表現した。
オウンドメディアにウエイト置いた「オウンドメディアマーケティング」という表現も定着しつつある。
宣伝会議2014年2月号に、企業のWebマーケティング担当者を対象に実施したアンケート結果が掲載されている。2014年に注目している施策としては、オウンドメディアマーケティングが37.6%となり、コンテンツマーケティングの32.4%を凌いで首位になった。(複数回答形式)このアンケートではインバウンドマーケティングという選択肢はなく、オウンドメディアマーケティングをインバウンドマーケティングに近い意味で捉えた回答者が多かったとも想像される。また、オウンドメディアマーケティングをコンテンツマーケティングの一手法と捉える向きも少なくない。ただし、オウンドメディアマーケティングは、自社メディアに重点を置くということが最大の特徴であることは言うまでもない。

企業が情報を発信するメディアとしては、クチコミが期待できるソーシャルメディア、すなわちアーンドメディアの価値も決して小さくない。オウンドメディアが注目される背景には、第三者組織が運営するソーシャルメディアに依存しすぎることへの警戒感がある。ソーシャルメディアは、一般的に運営企業が利用規約を柔軟に変更できるようになっている。利用規約に沿った使い方をしていれば、一方的にアカウントが凍結されることは想定しにくいが、Facebookでも一時的に機能が制限されるなどの事例は案外多い。情報発信に利用する企業にとっては、規約変更が突然実施されるリスクが常につきまとう。

2014年8月下旬から9月にかけて、Twitterのアカウントが大量に凍結され、ネット上で大きな騒動となった。凍結されたアカウントの共通点は、相互リツイートサービスに登録していたことだった。相互リツイートサービスとは、連携したアプリに投稿を許可することで、自分のアカウントにツイートした文章を登録されている全アカウントに一斉リツイートしてくれるというもの。アカウント保有者の意思に関係なく自動的にリツイートされるため、Twitterの利用規約に抵触する可能性が以前から指摘されていたが、これまではアカウントが大量に凍結されるケースは稀だった。

顧客との接点をできるだけ多く持つという意味では、あらゆるソーシャルメディアに公式アカウントを開設することが望ましい。しかし、各アカウントが独立したメディアと考えれば、運営するアカウントが増えるに伴って企業のコストも嵩むし、管理すべき顧客も分散してしまう。自社メディアをハブとして位置づけ、様々なメディア運用の効果を最大化することがオウンドメディアマーケティングの目指すところではないだろうか。