IoT(Internet of Things)でターゲティングはどう変わるか

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2013年あたりから、IoT(Internet of Things)という言葉を目にする機会が増えた。IoTとは、あらゆるThings(モノ)をインターネットに接続する技術の総称で、日本語では「モノのインターネット」などと訳されることが多い。野村総合研究所では、IoTを「PCやスマートフォンだけでなく、日用品・家電・自動車・建物・食物などのさまざまなモノがRFIDや組み込みセンサー、無線LANなどによりインターネットに接続し、識別したり、位置を特定したり、コントロール可能にしようとするビジョン」と定義している。
たしかに、インターネットに接続するモノの数は急速に増加している。Ciscoが公表した調査結果によると、2020年にインターネットに接続されるモノは世界で500億台に達する見込みであるという。これまではPCやスマートフォンなど「インターネットに接続されて当然」と思われてきたデバイスが中心だったのに対して、今後は、必ずしも十分なCPUやメモリを持たないデバイスもインターネットに接続されるようになる点が大きく異なる。Ciscoは、IoTを実現するためのインフラ投資など、関連する経済効果を合計すると、2020年には14兆ドル規模の産業になると予測している。2020年といえば、東京でオリンピックが開催される年であるが、その時には意外なモノまでインターネットに接続されている可能性が高いということになる。

インターネットに接続されるデバイスの数が増えるということは、基本的には市場の拡大につながるので歓迎されることには違いない。その一方で、規格や性能が異なる多様なデバイスをどう判定するかが大きな課題となる。従来、サーバにアクセスしてくるPCを判定する方法としては、主にクッキーが使われてきた。しかし、イギリスではクッキーの利用に承認を義務付ける法律が制定されたり、最新のWebブラウザには、ユーザーがクッキーによる行動履歴の追跡を拒否できる「Do Not Track」機能が搭載されるなど、将来的にはクッキーが使えなくなる可能性も決して低くない。さらに、今後はクッキーを扱えないデバイスの比率が高まるのは確実である。

そこで、近年注目を集めているのが、クッキーや端末IDに依存することなく、ブラウザや画面解像度などのパラメータを収集して、そのデータをリアルタイムで解析することでデバイスを判定する「フィンガープリンティング」と呼ばれる技術である。デバイス判定のためのフィンガープリンティング技術は、基本的に個人情報そのものは扱わないが、アメリカの電子フロンティア財団(EFF)の調査結果によると、デバイスやアプリケーションをどう設定しているかという情報から、非常に高い確率で個人を特定できることがわかった。もちろんユーザーのプライバシー保護には十分に注意をする必要があるが、インターネットに接続されるモノが多様化することでフィンガープリンティング技術が進化し、その結果として、これまでの常識を覆すようなターゲティング技術が確立されるかもしれない。