電通が発表した「2011年 日本の広告費」によると、2011年の国内インターネット広告市場規模は、大震災の影響もあって成長率は鈍ったものの、前年比4.1%増の8062億円とプラス成長を維持した。日本市場では、テレビ(1兆7237億円)にはまだ及ばないが、新聞(5990億円)の広告市場を上回り、テレビに次ぐ2番目の広告媒体としてのポジションを確立している。広告費の定義が日本と若干異なる可能性もあるが、イギリスではすでにインターネットがテレビを上回っており、日本でもテレビの市場規模に肉薄する日もそう遠くないと見られている。
インターネット広告の最大の魅力は、サイトへの誘導数や成約数など直接的な効果を測定できることである。現在では、広告がクリックされた回数に応じて広告料金が支払われるクリック課金型が主流になっている。クリックされた数によって広告料収入が左右されてしまうメディア運営者にとっては、クリック率を高めることに躍起になるのは当然のこと。サイトを訪問した人に対して、どんなタイミングでどの広告を表示すればクリック率を最大にできるか。インターネット広告進化の歴史は、クリック率を高める「最適化」の歴史といっていいだろう。
最適化の基本は、訪問者に興味を持ってもらえそうな広告を選んで表示することである。広告主の立場からすれば、自社の広告を見せる訪問者を選別することになるので、「ターゲティング」という表現が一般的に使われる。ターゲティングの手法は、大別すると「文脈ターゲティング」と「行動ターゲティング」の2つに分類できる。
文脈ターゲティングとは、広告が表示されるページに書かれている文章を解析して、内容と関連が深いと思われる広告を配信する手法である。利用者がそのページを訪問する目的はコンテンツを読むためであり、コンテンツに関連した広告こそ訪問者にもっとも興味を持ってもらえる、という考え方に基づくものだ。
一方、行動ターゲティングは、訪問者が過去にどのようなサイトを訪問したか、どのような広告をクリックしたかという行動履歴をクッキーの匿名情報を使って分析して、過去に閲覧したコンテンツに関連性が強い広告を配信する手法のことである。今見ているページを訪問したことも行動の一つなので、文脈ターゲティングの要素を取り入れた行動ターゲティング技術も登場している。
数年前から、次世代のターゲティング技術として注目度が高まっているのが「オーディエンスターゲティング」だ。数多くの提携サイトにおけるコンテンツの閲覧や検索履歴、広告のクリックなどの行動履歴を分析することで、オーディエンス(サイト訪問者)の興味や嗜好を細かくセグメントに分類し、各セグメントに対して最適な広告を配信する手法のことで、「どこに掲載するか」ではなく「どんな条件を満たした訪問者に配信するか」に重点を置いているのが特徴である。