進化を続けるYouTube広告

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YouTube広告といえば、2011年3月に運用を開始した「TrueView広告」が主流になっている。いくつかのフォーマットがリリースされたが、今はコンテンツが再生される前に広告が5秒間表示されて、スキップするか広告を続けて見るかを選択できる「インストリーム広告」と、過去の視聴履歴や検索キーワードに基づいて、コンテンツとの関連性が高い動画が「関連動画」欄に表示される「インディスプレイ広告」の2つに集約されている。インストリーム広告は、広告が30秒間再生されるまでにスキップされた場合は、広告料が発生しない点が大きな特徴。一方、インディスプレイ広告は、サーチエンジンのリスティング同様、クリックした場合、つまり動画を再生した場合のみ広告料が発生する。

そのTrueView広告に新しい広告メニューが追加された。2015年5月に発表された新広告「TrueView for shopping」は、YouTubeの動画上にオーバーレイ表示される「カード」をクリックすると、広告主のECサイトがブラウザで開くようになっている。カードとは、2015年4月に新しく追加された機能のことである。

YouTube動画上に吹き出しのような形でオーバーレイ表示できる機能としては、以前からアノテーションがよく使われてきた。外部サイトとの関連付けを行えば、自社サイトへのリンクも掲載できるため、動画全体を広告のように見せることができる。ただし、アノテーションには、スマホなどモバイル端末では表示されないという大きな弱点があった。この弱点を補う新しい機能としてリリースされたのがカードである。「TrueView for shopping」は、そのカードを利用して、YouTube動画からECサイトへの誘導に特化した広告と表現できる。

FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアは、商品の販売に直結する広告に力を入れてきている。たとえば、Facebookは2014年7月にFacebook広告とFacebookページの投稿に「Buy」ボタンを設置するテストを開始したのに続き、2015年3月には商品カタログをアップロードすると、オーディエンスごとに関連性の高そうな商品の広告を表示する「プロダクト広告」を正式に開始している。ちなみに、「Buy」ボタンについては、Twitterも導入をテストしており、ソーシャルメディアのクチコミとして知った商品の衝動買いを促す広告として注目されている。

以前、Googleのシュミット会長が、「Google検索の最大のライバルはAmazon」と発言したことがある。2013年にオンラインで商品を購入する目的で行われた検索の約1/3はAmazonで開始されていて、この数字はGoogle検索の2倍以上にあたるという。ただし、特定のECサイトやサーチエンジンで商品を検索するのは、ある程度、買う商品を決めている「今すぐ客」に限られる。それに対して、YouTubeのTrueView for shoppingや、Facebookのプロダクト広告は、商品の認知から興味喚起、購入までのプロセスを一気に短縮することを目指すものだ。今後、ECサイトの広告主が増えることが予想されるが、これらの広告の効果検証に注目したい。