スマートフォンからPCへ引継利用する理由

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スマートフォン普及に伴い、電子商取引のスマートフォン比率も急拡大している。ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが公表した決算説明資料によると、2013年7~9月期のデバイス別売上はスマートフォンが45.9%に達した。PC(50.5%)を上回るのは時間の問題と思われる。また、楽天が2013年7月に開催したカンファレンスで明らかにした数字によると、楽天市場におけるスマートフォン比率は2013年12月には42%になる見込みだ。今後もますますスマートフォン比率が高まることは間違いない。ネット販売各社がスマートフォンサイトに力を入れるのも納得できる。

 その一方で、グーグルからは気になる調査結果も発表されている。2013年1~2月にスマートフォンやPC、テレビを全て所有する1351人を対象にマルチデバイスの利用動向調査を実施したところ、「情報検索」、「Webサイト閲覧」、「ショッピング」において7割以上がスマートフォンを起点として、その後をPCやタブレットに引き継いで利用していることが判明した。ちなみにアメリカのGoogleも同様の調査を同じ時期に実施したが、スマートフォンを起点とする割合は日本の方が5~10%高いという結果になった。

 問題は、スマートフォンからPCやタブレットへの「引継利用」の理由である。Webサイト閲覧やショッピングにおいて、スマートフォンから行動を起こした後にPCに引き継ぐ理由としては、「Webサイトが見づらい」などの理由が上位を占めている。移動中のちょっとした時間にスマートフォンで予備的な情報収集をして、詳しくはPCでサイトの情報を閲覧、という行動パターンの人も増えている。しかし、スマートフォンで目的を完結しようと思ったけれど、スマートフォンで表示されるサイトが見づらいので仕方なくPCに切り替えたという人も少なくないこともわかる。

 上記の調査にある「Webサイトが見づらい」というのは、スマートフォンサイトが用意されていなくて、PCサイトがそのまま表示されたからではないか、とも思える。しかし、2013年7月に国内の経営コンサルティング会社が実施した調査では、スマートフォンサイトの画面が見づらくて「PCサイトに表示を切り替えた」経験がある人が63%に達したほか、スマートフォンでWebサイトを閲覧する際に、PCサイトとスマートフォンサイトのどちらが使いやすいかという質問に対しては、「PCサイト」と回答した人が「スマートフォンサイト」を6ポイント上回っている。

 一般的なスマートフォンサイトの場合、アクセスしてきた端末がスマートフォンと識別されると自動的にスマートフォンサイトにリダイレクトされる。確かに合理的な仕組みではあるが、スマートフォンサイトに掲載される情報では物足りないと感じる人にとっては、PCサイトに切り替えるという手間を強制させられることになりかねない。スマートフォンサイトからPCサイトへのリンクが用意されている場合は、まだいい方かもしれない。PCサイトへの切替ができなければ、PCから再度アクセスするしかない。そのようなケースが、「引継利用」の中に結構含まれるのではないか。スマートフォンサイトを構築する際には、こういったスマートフォン利用者のニーズや行動を把握しておくべきだろう。