Amazonは7月23日、初めてのスマートフォン「Fire Phone」の出荷を開始した。Amazonがスマートフォンの開発を進めていることは何度も報じられていたが、6月の正式発表でようやく細かい仕様が明らかになった。他社のスマートフォンにない機能として、持っている角度やユーザー視線などを認識することで、ジェスチャーでもスマートフォンを操作できるセンサーシステム「Dynamic Perspective」と、物体にカメラを向けるだけでさまざまな情報を検索して表示してくれる「Firefly」の2つが搭載されている点が最大の特徴だ。ちなみに、Fire PhoneのOSは、Kindle Fireと同様、Android 4.2.2をカスタマイズした独自OS「FireOS 3.5.1」である。
Dynamic Perspectiveは、前面に搭載された4つのカメラと4つの赤外線LEDを使って、写っている物体の裏側をのぞきこむような立体感覚を味わえる。この機能を応用して、スマートフォンを傾けるだけでページをスクロールしたり、アプリを起動させたり、いわばMicrosoft Kinectのようなゼスチャーによる操作が可能になる。
一方、Fireflyは、カメラでとらえた画像について自動的に情報を収集してくれる機能で、販売されている商品と認識されれば、Amazonの販売ページも表示して、すぐに購入手続きをすることもできる。面白い使い方としては、名刺をカメラで写せば、電話番号を認識して、ワンタップでその番号に電話をかけてくれる。また、街で流れているBGMを聞かせると、その曲のCDや主題歌として使われている映画などの情報を探してくれる。
Amazonは、主に電子書籍端末Kindleシリーズで動作するアプリを販売するアプリストア「Amazon Appstore」を2011年から運営しているが、ここにきて登録アプリ数も24万本を超え、サービス提供の国・地域も40ヶ国に達している。今回のFire Phone発売を契機に、Amazonが今後スマートフォン向けアプリの販売に力を入れてくることは間違いない。実は、すでにFire Phone向けアプリの開発者に対するインセンティブプログラムも開始している。アプリ内購入機能を持ち、Fire PhoneのDynamic PerspectiveやFireflyに対応しているなど一定の条件を満たした有料アプリに対して、1アプリにつき5000ドル相当の仮想コインを提供するという力の入れようだ。開発者アカウント1つに対して3アプリまでがインセンティブの対象になるので、最大15000ドルの報酬ということになる。
Dynamic Perspectiveにしても、Fireflyにしても、これまでにはなかった購買体験を提供してくれる機能だけに、今後、新しいタイプのEC関連アプリが登場することが期待される。Dynamic Perspectiveを利用したアプリを開発するためのSKDについては、すでに公開されている。ただし、Fireflyについては、店頭で商品情報だけを収集してネットで購入する「ショールーミング」を助長するとして小売店からは警戒される可能性もあり、FireflyがAmazonでの売上にどれだけ貢献するかについては、まだ未知数だ。Fire Phone発売以降のAmazonの決算にも注目したい。