重要なのはストーリーやシナリオの設計

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ゲーミフィケーションという言葉からは、Facebookページなどで無料配布されているアプリをイメージする人が多いかもしれない。たとえば、大塚製薬の「ポカリスエットのIQチェック」や湖池屋の「カラムーチョのヒー度チェック」など、Facebookページで「いいね!」を押してくれた人に自己診断アプリを配布するキャンペーンが注目された。これらのアプリには、診断中にスポンサーの商品やブランドの認知を高めるシナリオが盛り込まれていて、診断結果はFacebook上の友達間で共有される仕組みだ。

一方、キリンがFacebookページで実施したコーヒー飲料「ファイアネオ」キャンペーンは、製品に関するクイズ3問に答えるというシンプルなものだったが、全問正解者には「Facebookでの友達の数だけ、コーヒー飲料をプレゼントする」というルールがクチコミとして広がり大成功を収めた。クイズという使い古された手法であっても、ソーシャルメディアの特性を活かした特別ルールを設けるだけでゲーム性を高めることに成功した。見た目はゲームっぽくないが、ゲーミフィケーションの考え方をうまく取り入れた例と評価できる。このように、ゲームアプリを新たに開発しなくても、ストーリーや設定を工夫することでゲーミフィケーションの効果を得ることができるのである。

ゲーミフィケーションは、Facebookのようなソーシャルメディアだけではなく、コーポレートサイトにも応用が可能だ。サイト訪問者をゲーミフィケーションを使ってファンに育てる試みとしては、サムスンのアメリカ法人が2011年11月に開始した「Samsung Nation」の事例が参考になる。簡単に説明すると、サムスン製品の紹介ページなどを巡回して与えられたミッションを達成すると、バッジやトロフィーがもらえる、いわばfoursquareの仕組みをそのままコーポレートサイトに導入したような感じだ。

Samsung Nationでは、友達と一緒に訪問するきっかけを作るためにFacebookやTwitterと連動していることはもちろん、上級者が初心者を助けるコミュニティも設置されており、自社製品を紹介するコーポレートサイトでありながらソーシャルメディア機能も兼ね備えている。コーポレートサイトのあり方の一つの可能性を示しているといえるのではないか。

ゲーミフィケーションを自社のコーポレートサイトやECサイトに応用して効果をあげる秘訣は、いかに全体のストーリーを組み立てられるか、ということに尽きる。面白いゲームアプリを開発して無料で配布するだけでは、集客効果はあるかもしれないが、ゲーミフィケーションの本来の目的である顧客ロイヤリティやエンゲージメント向上にはつながらない恐れがある。友達とのコミュニケーションによってレベルアップするなど、自然な形で本当のファンになってもらえるストーリーを描くことが課題だろう。