短期間で見込み客をファン化する「プロダクトローンチ」

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インターネットを活用したマーケティング手法の多くは、アメリカで実績を上げた後に日本式にアレンジされたものである。数年前から日本でも知られるようになった手法の一つに、「プロダクトローンチ」がある。プロダクトローンチは、商品やサービスの販売を開始する前に見込み客を集め、動画などのコンテンツを連続して無料で提供して関係性を深めていき、発売開始と同時に膨大な数量を一気に販売するという手法を指す。アメリカのジェフ・ウォーカー氏が試行錯誤の末に体系化したノウハウを「プロダクトローンチ・フォーミュラ(方式)」として発表したことをきっかけに、マーケティング業界で広く知られることになった。

 プロダクトローンチの一般的な流れとしては、まず登録ページ(ランディングページ)に集客して興味を持った人にメールアドレスを登録してもらい、質の高い動画やPDFなどのコンテンツを無料で連続して提供していく。その際、ブログのコメント機能などを活用して、無料コンテンツを見た人からの質問や意見を集め、次回配布するコンテンツの内容に反映させることで見込み客との関係性を強化していくところに大きな特徴がある。最後の動画で商品の販売日や販売価格を発表して、その直後に、限られた期間のみ注文を受け付ける。最近では、販売終了日にリアルタイムのWebセミナーを開催して、注文するかどうかを迷っている人からの質問に答えるケースも増えている。

 プロダクトローンチと聞くと、無料動画で散々煽ったうえで高い商材を売りつける胡散臭いイメージを持っている人もいるかもしれない。最近のプロダクトローンチでは、ほとんどのケースで動画が使われるので、動画マーケティングの一形態に分類されることもある。商品を販売する前に質の高いコンテンツを無料で配布するという点では、日本でもよく知られるようになった「FREE(無料)戦略」と共通する点も少なくない。しかし、プロダクトローンチの本質は、短期間に見込み客を熱心なファンに育てることにある。限られた期間内に見込み客と集中的に接触して、見込み客からの質問や意見に対応しながら関係性を強化し、発売日に向けて購買意欲を高めていくという手法は非常に合理的であり、様々な業種や業態に応用が利くはずである。実際、プロダクトローンチが以前から盛んに行われているアメリカでは、法人向けの専門サービスなどにもプロダクトローンチが採用されて大きな実績を上げている。

 日本でも、プロダクトローンチを使って短期間に億単位の売上を達成する例がいくつも誕生している。それらの成功事例から、無料で提供する動画は15分前後で4回シリーズにすれば成約率が高くなるなどの法則が徐々に確立されているようだ。ただし、動画を無料で提供するという部分は、あくまでも手段にすぎない。見込み客をファンに育てるという本質の部分を理解することなく、やり方を真似ただけではうまくいかない。逆に、見込み客をファンに育てる本質さえ理解できれば、成功事例を参考にして独自のやり方をアレンジすることもできるだろう。