Appleの新サービス「Maps Connect」の可能性

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今年10月、Appleがアメリカで地図サービスの新機能「Maps Connect」の提供を開始した。このMaps Connectは、一言で説明するとGoogleの「マイビジネス」のように、マップ上に店舗情報を無料で登録できるサービスである。利用するには費用はかからないが、店舗情報を登録するには、Apple IDでサインアップして利用規約に合意する必要がある。登録申請後にAppleから確認電話がかかり、認証に必要なPINコードを受け取る仕組みなども、Googleマイビジネスと似ている。他にも、Googleマップの「インドアマップ」に相当する「Indoor」という機能もあり、AppleがGoogleのサービスを意識して開発したことは明らかだ。
この分野では、Googleがこれまでイニシアチブをとってきた。もともとは「Googleローカルビジネスセンター」という名称だったが、2010年に新機能が追加されたことをきっかけにサービスの名称が「Googleプレイス」に変更され、さらに2014年6月にはGoogle+との連携機能を強化した上位サービス「Googleマイビジネス」に統合された。Googleプレイスを利用していた企業は、自動的にGoogleマイビジネスのダッシュボードに統一される。Googleマイビジネスに登録された情報はGoogle検索のみならず、GoogleマップなどGoogleのサービスに反映されるため、Google経由で集客したい企業や店舗にとっては、今やGoogleマイビジネスの活用は必須と言っていいだろう。

Appleマップといえば、2012年9月にiOS6へのバージョンアップに合わせて独自のマップサービスの提供を開始したものの、その精度の低さがユーザから散々叩かれたことは記憶に新しい。CEOのティム・クック氏が公式文書で謝罪するまで騒動は拡大した。しかし、そのことがあってからAppleはマップサービスの改善に力を入れ、今ではGoogleマップに引けを取らないクオリティになっている。調査会社comScoreのデータによると、2013年9月時点でのスマートフォンにおける地図サービスのシェアは、Googleマップが43%なのに対して、Appleマップのシェアは25.6%まで拡大している。AppleマップがiOSでしか使えないことを考慮すると、Appleマップがおおいに健闘していることがわかる。

Appleの地図サービスに将来性を感じる理由の一つは、iOS7に標準搭載された位置情報サービス「iBeacon」の存在である。iBeaconは、低消費電力の近距離無線技術であるBluetooth Low Energy(BLE)がベースになっている独自機能。iBeacon向けの電波の受信領域に入ると、iOS端末の相対的な位置を認識して、端末にインストールされているiBeacon対応アプリにプッシュ情報を配信できるが大きな特徴である。この機能を活かして、来店客にタイムリーに情報を配信するO2Oアプリに採用される例が急増している。Maps Connectには、現時点ではiBeaconとの連携機能はないものの、将来的には何らかの連携ができるようになる可能性が高いと見られている。

Android陣営の中心メンバーでもあるGoogleは、今後O2Oソリューションを強化してくることは間違いない。サーチエンジンの開発で培ってきた技術を活かして、ネット上に分散されたクチコミ情報や企業データなどを結合できるなど、Googleの優位性は依然として大きいかもしれない。これに対して、Appleが満を持してリリースしてきたと思われるMaps Connectがどのように戦っていくのか。日本でのサービス開始が待たれる。