ゲーミフィケーションの本質は顧客ロイヤリティの向上

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Webマーケティング業界では、毎年いくつかの「流行語」が誕生する。今年の流行語としては、「ビッグデータ」や「オーディエンスターゲティング」などがあげられる。流行語といえるかどうかの判定は、専門のカンファレンスやサミットが開催されることが一つの目安となる。今年6月に、日本では初めてとなる大規模な専門イベント「ゲーミフィケーションカンファレンス 2012」が開催された。「ゲーミフィケーション」も今年の流行語候補の一つといっていいだろう。

ゲーミフィケーション(gamification)とは、利用者に楽しんでもらえる仕組みを提供して顧客ロイヤリティやエンゲージメント(愛着心や絆)向上を目指す手法のことで、アメリカで2010年頃からさかんに使われだした言葉である。2011年1月には、アメリカで最初の「Gamification Summit」が開催され、ゲーミフィケーションの定義を「ゲーム的思考やゲームメカニクスを使って問題を解決し、利用者を引き付けるためのプロセス」と定めた。

日本で注目されるようになるまでは少しタイムラグがあった。ウィキペディア日本語版にゲーミフィケーションが登録されたのも2011年に入ってからだ。2011年9月には、テレビ東京系の人気ニュース番組「ワールドビジネスサテライト」でゲーミフィケーションが取り上げられたことで、言葉自体の認知度は高まったが、その意味や目的については「ゲーム化すること」などとゲーミフィケーションの一面しか捉えていない概念で紹介されることが多いようだ。

ゲーミフィケーションの本質は、すでに触れた通り、顧客ロイヤリティやエンゲージメントを向上させることにある。もちろん、利用者に楽しく参加してもらう要素は重要だが、見た目がゲームのようである必要はなく、ゲームそのものを採用することは、あくまでもゲーミフィケーションの一つの手段にすぎない。そもそもゲーミフィケーションの考え方自体は決して新しいものではない。ポイントカードなどのロイヤリティプログラムは古くから存在するが、その参加方法やコミュニケーション手段、報酬の形態などを進化させたものにすぎない。

ゲーミフィケーションを説明する際に、よく引き合いに出されるのが、スマートフォンなどの位置情報を共有できるSNS「foursquare」だ。foursquareでは、特定のエリア内で頻繁にチェックインするなど条件を満たせば、バッジや市長の称号などバーチャルな報酬をもらえることが参加する最大の楽しみである。このように、顧客や従業員が楽しみながら行動を自主的に起こすような仕組みを提供することが、ゲーミフィケーションの基本的な形となる。