レスポンシブWebデザインとは、PCやスマートフォン、タブレットなどスクリーンサイズが異なる端末で同じURLにアクセスしても、それぞれのスクリーンサイズに最適化されたレイアウトで表示されるWebデザイン手法のことを指す。海外では2011年頃からスマートフォン対応の手法として採用され始めていたが、注目される大きなきっかけとなったのは、Googleがウェブマスター向け公式ブログにおいて、「Googleがお勧めするスマートフォンに最適化されたウェブサイトの構築方法」と題した記事の中でレスポンシブWebデザインを推奨したことである。
レスポンシブWebデザインを採用してスマートフォン対応をすると、Googleの検索結果の順位において優遇されるのではないか、という期待から「スマートフォンサイトはレスポンシブWebデザインで作る方がいい」という声も聞かれるようになった。ただし、Googleはすべてのデバイス向けのコンテンツが同じURLになって正しくインデックスされる点を評価していて、検索順位の決定に影響するとは言っていない。レスポンシブWebデザインにしただけで、無条件に有利になるわけではないという点は理解しておく必要がある。
それでも、一つのHTMLでPC用とモバイル用のページを表示できるメリットは多い。更新作業の手間を軽減できるし、正しくインデックスされることで結果としてSEO的にプラスになるケースも少なくないと思われるからだ。一見すると非常に優れた手法に思えるが、企業のスマートフォンサイトを調査してみると、レスポンシブWebデザインを採用しているところは思ったより少ない。
レスポンシブWebデザインが採用されない理由はいくつか考えられる。最大の理由は、レスポンシブWebデザインでは、スマートフォンに最適化された入力フォームを設置することが難しい点ではないだろうか。Webサイトの資料請求や会員登録などの入力フォームにおいて、入力途中で離脱する率を低くする施策を「入力フォーム最適化」あるいは、Entry Form Optimizationという和製英語の頭文字を取ってEFOなどと表現する。レスポンシブWebデザインは、CSSの設定でPC用とモバイル用のページをレイアウトを切り替える仕組みだが、入力フォームをスマートフォン向けに最適化すればするほど、その設定は複雑になってしまう。ECサイトなど、入力フォーム途中での離脱が売上に直結するようなサイトでは、スマートフォンに最適化した入力フォームを簡単に設置できるスマートフォン専用サイトの方が有利と言えるかもしれない。
PCサイトとスマートフォンサイトで異なる点としては、動画形式にも注意が必要だ。PCサイトではFlashをベースとした動画が広く使われているが、スマートフォンではOSによってFlashが再生できないこともあり、MP4形式がよく採用される。レスポンシブWebデザインを採用する場合は、HTML5から新しく追加された「video」タグを使い、PC向けとスマートフォン向けでは異なる形式の動画を表示するように設定する必要がある。