「購買体験を共有する楽しさ」が成功の鍵か

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最近、Facebookページにおいて商品やサービスを販売する企業が増えている。ショッピングカートやオンライン決済用のFacebookアプリを組み込めば比較的簡単にショッピング機能を搭載できるので、Facebook支店のような感覚でテスト的に運営を開始するケースが多いようだ。これらのビジネスはFacebook内の商取引という意味で「Fコマース」とも表現される。

コンサルティング会社Booz & Companyによると、ソーシャルコマースは、「ソーシャルメディア内でのオンライン販売」、「独自のソーシャルコマースプラットフォームを使ったビジネス」、「ソーシャルアプリを使ったECサイトや実店舗での購買体験の向上」の主に3つのコア領域に分類できるという。Fコマースは、「ソーシャルメディア内でのオンライン販売」の典型例といえる。同社では、ソーシャルコマースの市場規模について、5年以内に300億ドル規模に達するという薔薇色の未来を描いているが、足元の現状を見るとなかなか厳しい面もあるようだ。

今年に入って、JC PennyやGAP、Gamestopなど、アメリカの有力企業が相次いでFacebookページでの販売から撤退した。テストという当初の目的を果たしたので、将来の本格参入を想定した予定通りの撤退、という見方もないわけではないが、Fコマースは思ったほど儲からない、という印象が広がったことは否めない。一方、General Motorsも年間約1000万ドル費やしてきたFacebookの有料広告を見直すと報じられた。もっとも、GMはFacebookページなどFacebook上のコンテンツ運営に年間約3000万ドルを投じており、こちらは効果があると認めて継続するようだ。

ソーシャルメディアで自然発生したクチコミに大きな効果があることは疑いようがない。しかし、企業からの宣伝や売り込みについては、タイミングを慎重に考える必要がある。Forrester Researchのアナリストは、やり方が下手で撤退したFコマースを「友達とバーで楽しく飲んでる時に、横から割り込んで商品を売り込むようなもの」と揶揄した。この言葉には、ソーシャルコマースの難しさとともに、成功のヒントが凝縮されているように思う。

では、ソーシャルコマースを成功させるための鍵は何であろうか?これにはいろいろな意見があると思うが、購買体験を共有する楽しさを提供することが基本ではないだろうか。そういう意味で、前述の3つのコア領域にもある「ECサイトや実店舗での購買体験の向上」がキーワードになろう。

楽天は、楽天市場の商品ページにFacebookやTwitterなどを通じて友達を招待してチャットが行える機能「Shop Together」を2011年11月に導入した。楽天の子会社Buy.comの技術をベースにしたもので、いずれ楽天市場のすべてのページに展開していく予定だという。このような手法がソーシャルコマースの決定版というつもりはないが、友達と一緒にショッピングを行う楽しさを提供できるとすれば、ソーシャルコマースの本質に近いのではないか。今後、どのような形で使われるようになるかに注目したい。