Facebookの狙いはソーシャルグラフのインフラ化

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新しいソーシャルサービスを提供する側にとって、Facebookアカウントによるシングル・サインオンを導入するメリットは大きい。先に紹介したソーシャルランチは、2011年10月の正式サービス開始以来、半年間で登録会員数は35000人を超え、延べ1万人以上のランチ交流を成立させた。利用できる会員をFacebook会員に限定することで、多くの独自会員を短期間で獲得することに成功したといえる。ソーシャルランチにログインする際に、アプリ連携によってFacebookに登録された情報が同意に基づいてソーシャルランチ側にも記録されるが、登録する側はクリックするだけで氏名やメールアドレスなどを入力する手間が省ける。

不要になったモノやお気に入りのアイテムを気軽に売買できるソーシャルフリーマーケット「Whytelist(ホワイトリスト)」も、利用するのにFacebookアカウントが必須なため、実質的にFacebook会員専用のサービスである。2012年4月にβ版が開始されてわずか1ヶ月でサイト訪問数は約4万人に達するなど、急成長を遂げている。「どこで買うかではなく、誰から買うか」をコンセプトにしていて、Facebookに登録された相手の「顔」が見えるのが最大の売り物だ。

今後、ソーシャルサービスに限らず、情報提供サイトやニュースサイトでもFacebookやTwitterとの連携が進むことは間違いない。特に、実名制SNSで世界で9億人の利用者を擁するFacebookの認証情報やデータを利用することが当たり前のようになっていくだろう。Facebookアカウントを持っていれば様々なサービスを簡単に利用できるようになり、Facebookに登録されている個人情報がいわばネット上の身分証明書のような役割を果たすことになる。

一方、Facebookにとっても、このような機能を外部サイトに開放する目的は明確である。Facebookは、誰と誰が友達であるといった人間関係を基に、誰がどのような情報に関心があり、その情報が誰にとってどの程度重要なのかを判断する仕組みを持っている。これらのデータを提携サイトでも共有できるようにすることで、FacebookをWeb全体のインフラにするのが狙いだ。そのことは、Facebookが2010年4月にアメリカで開催した開発者会議「F8」で発表された新戦略にはっきりと反映されている。連携する外部サイトにFacebook内のデータを提供し、連携サイトのコメント欄などのソーシャル機能をすべてFacebookが担う。そして、Facebookが太陽とした場合、何万もの連携サイトは太陽を中心とした惑星のような存在だと表現されている。

Facebookの壮大な構想が実現するかどうかはわからないが、Facebookがその実現に向けて着実に手を打ってきていることだけは確かなようだ。