ヤフーが打ち出した「eコマース革命」の本当の狙いは

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ヤフーは、オンラインモール「Yahoo!ショッピング」のストア出店料と売上ロイヤルティ、および「ヤフオク!」のストア出店料と出品手数料の無料化などを柱とする新方針を「eコマース革命宣言」として発表した。「Yahoo!ショッピング」は、15000近いストアが出店しており、日本では楽天市場に次ぐ規模を誇る。今回の無料化発表は業界に大きな波紋を投げかけた。発表後わずか2日後には、「Yahoo!ショッピング」の出店希望数が約1万件に達したという。また、「Yahoo!ショッピング」や「ヤフオク!」ストアの出店は、これまで原則的に法人に限られていたが、年内を目処に個人にも認められるようになった。事前予約受付を開始したところ、こちらもわずか2日で約16000件の申込みがあった。

 プレゼンテーションを行ったソフトバンクの孫社長の口からは、「これまでヤフーは間違っていた」という言葉まで飛び出した。2020年までに楽天市場を抜いて流通総額トップのオンラインモールを目指すという具体的目標も公表され、ソフトバンクグループの本気度が強烈に伝わってくる革命宣言となった。

 今回の「eコマース革命」で最大の驚きは、売上ロイヤルティまで無料にしたという点だろう。従来、楽天市場にしても、Yahoo!ショッピングにしても、売上の一定割合をロイヤルティとして徴収するビジネスモデルを採用していた。そのロイヤルティを正確に把握するために、外部サイトへの誘導や顧客の個人情報取得など、モール外でビジネスをすることを厳しく禁止してきた。ビジネスが軌道に乗っても、顧客を連れてモールから独立することは事実上できない仕組みになっていた。
ところが、今回Yahoo!ショッピングではロイヤルティがなくなったため、自社サイトへの誘導や見込み客のメールアドレス収集など、これまで許されなかった行為も解禁された。つまり、Yahoo!ショッピングやヤフオク!のストアを集客目的、しかも無料で使えることになる。

 他のモールも何らかの対抗策を打ち出してくるのではないかと予想されていたが、今のところ楽天は静観の構えを崩していない。あるメディアの取材に対して、楽天市場に出店している約41000店のうち、すでに約8500店がYahoo!ショッピングにも重複出店しているが、独自の調べでは楽天市場の方がYahoo!ショッピングより概ね3~4倍の売上がある、と回答をしている。特に対抗策を講じなくても、楽天市場からYahoo!ショッピングに本店を移すストアは多くない、と見ているようだ。

 今回打ち出されたヤフーの新方針は、楽天市場だけを狙った仕掛けのようにも見えるが、日本経済新聞は、今後台頭してくるであろうソーシャルコマースなどの新興勢力を意識した長期的戦略だと分析する。その一例として、LINEがオンラインショッピング市場への参入を公言していることをあげている。たしかに、ストア出店料と売上ロイヤルティに依存するビジネスモデルに固執していたのでは、楽天市場に次ぐ日本2位の地位も安泰とは言えないかもしれない。ヤフーが今後、どんな「次の一手」を打ってくるのか、ますます目を離せない。