クラウドソーシングは企業に浸透するか

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7月8日、日本で初めてのクラウドソーシングの業界団体「クラウドソーシング協会」が正式に活動を開始した。クラウドソーシングとは、直訳するとクラウド(Crowd=群衆)にソーシング(Sourcing=委託)するという意味で、自分のスキルや労働力を収入にしたい人に、インターネットを通じて簡単に仕事を外注できるサービスのことを指す。
多くのインターネットビジネスと同様に、クラウドソーシングサービスはアメリカで誕生した。本格的なクラウドソーシングサービスとしては、1999年にサービスを開始したElanceが最初といわれている。
その後、2004年には現在では業界最大手に成長したoDeskがサービスを開始し、この2社が牽引する形でアメリカで市場が形成されていった。2013年時点の登録者数は、oDeskが500万人、Elanceが250万人で、この2社だけで1年間に発注された仕事の合計金額は約750億円にのぼる。ちなみに、日本経済新聞の記事によると、2013年の世界のクラウドソーシング市場規模は約2000億円で、2018年には1兆円を突破するとしている。
日本では、2008年にランサーズが、2011年にはクラウドワークスがサービスを開始して、現在ではクラウドソーシングサービスを提供する会社は、小規模のものを含めると200社近く存在する。矢野経済研究所の調査によると、2014年の国内クラウドソーシング市場規模は391億円の見込みだが、今後年間1.5倍のペースで成長を続け、2017年には1473億円に拡大すると予測されている。

クラウドソーシングは、仕事を発注したい企業と仕事を請けたい個人をマッチングさせ、仕事が検収されたことを確認した後に、事前に預かっていた報酬を支払うエスクロー的なサービスを提供することで、報酬の一部を手数料として徴収するビジネスモデルである。発注する企業のメリットは、依頼したい仕事の内容を登録するだけで、全国の会員から提案が寄せられ、最も有利な条件を提示した人に発注できることだ。ディレクションさえきちんとできれば、制作会社に依頼するより格段に安価に業務を外注することも可能になる。

もっとも、日本ではまだクラウドソーシングを活用している企業は多くない。クラウドソーシングに登録しているフリーランスの大半が個人であるため、ボリュームのある仕事を発注するには複数の個人に断片的に仕事を依頼するしかなく、その発注や進行管理などのノウハウが企業にないこと、そして、個人に直接発注するという形態は、コンプライアンスの問題などで組織としての決裁が下りにくいことなどが理由にあげられる。

アウトソーシングや外注という言葉からは、経費の削減というメリットしかイメージできないかもしれないが、自社に足りないリソースをタイムリーに、しかも安価で揃えられると考えれば、クラウドソーシングは大きな武器になり得る。コンテンツマーケティングを推進するには、コンテンツをいかに効率よく制作するかが企業にとって課題であったが、クラウドソーシングを上手に活用することで、その障壁を一気に取り払うことができるかもしれない。