ライフログという言葉の認知は今一つ

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あらゆるデータがデジタル化されるようになり、企業が保有・管理するデジタルデータの容量も爆発的に増加している。Symantecが2012年6月に発表した調査報告書によると、世界の企業が現在保有しているデジタル情報容量は2.2ゼタバイト(22億テラバイト)に達しており、その維持に必要なコストは年間1兆1000億ドル(約88兆円)にものぼるという。それだけコストをかけるだけの価値はあり、調査対象になった38ヶ国の企業のIT幹部は、デジタル情報の価値が自社の企業価値すべての49%を占めると認識しているらしい。Symantecは、このような「情報の爆発」が続く現状では、必要な時に必要な人が情報を素早く利用できることが重要だとして、「インフォメーション・セントリック」という考え方を以前から提唱してきている。
デジタルデータの容量が爆発的に増加している背景には、モバイル端末の進化やソーシャルメディアの普及など様々な要因が関係している。スマートフォンやタブレットなどモバイル端末を経由して、FacebookやTwitterに投稿されるテキスト情報や位置情報はますます増える一方である。Cisco Systemsの予測では、2016年にはモバイルインターネットのトラフィック量だけで年間130エクサバイト(1億3000万テラバイト)に膨らむという。

インターネットに常時接続できるモバイル端末が登場すると、生活者のプロフィール情報や行動履歴、記録情報などをすべてデジタルデータの記録として残す「ライフログ」という考え方が生まれた。アメリカではWeb2.0とほぼ同時に注目されだして、2004年にはすでにアメリカ国防総省の関連機関で研究がスタートしている。日本でも、その動きに追随するかのように、2006年から経済産業省が中心になって実施された「情報大航海プロジェクト」でいくつかの実証実験が行われた。

日本では、ライフログとは一般的に、消費者の性別や年代などの「プロフィール情報」、購買履歴や交通機関の利用履歴などの「行動記録情報」、日記や写真、体重記録などの健康記録情報などの「記録情報」の3つを指す。ライフログが一元管理できて、生活者の好みや関心がタイムリーに分析できればマーケティングや広告に応用でき、ビジネスへの貢献も大きい。2009年には「日経コミュニケーション」誌が主催する「ライフログ・サミット」が開催されたが、残念ながら「ライフログ」という言葉は今一つ浸透しなかった。矢野経済研究所が2011年10~11月にインターネット利用者を対象に行ったアンケート調査によると、ライフログという言葉の認知度はわずか6%にとどまっている。しかし、昨年頃から、今度は「ビッグデータ」という別のキーワードに含まれる形でライフログが再び脚光を集め出している。